「We」の音楽、「You and me」の音楽

ウッドストック(Woodstock)のDVDを買った。ナント1500円!
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0007Z9XWY/qid=1123244001/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/250-4252673-9221006


この1969年8月のロック・コンサートの映画を銀座のヤマハ・ホールで観たのは1970年だったかな。アメリカ国歌を演奏するジミ・ヘンドリクスのギターが突如悲鳴をあげ、やがて急降下爆撃音に変わってゆく・・・。世の中では伝説になってしまったけど、このシーンの衝撃はずっと心にリアルに残っている。


今度買ったDVDはその映画とは編集が違うし、登場するアーティストにも違いがある。何といっても、映画ではカットされていたジャニス・ジョップリンが入っているんだから、それだけでも買いだ(笑)。ジャニスは凄い。このDVDでもジミヘンと双璧だね。


DVDのオープニングはクロスビー・スティルス&ナッシュ。彼らの曲がかなり多く出てくるのは嬉しい。*1お、ジョーン・バエズも出てたのか。グレース・スリック(ジェファーソン・エアプレーン)って意外と美人じゃないの。ザ・フー、音楽は良いんだけどね。パフォーマンスがオオゲサでサマにならねーんだよな(笑)。なんてそれぞれのアーティストのことを書き出すとキリがないな(笑)。


DVDはコンサートの準備や、聴衆の様子をたんねんに描く。40万人というベラボーな数の人間がとりたてて施設のないニューヨーク州の田舎町に集まったことだけでも大事件なワケだ。今の長野市和歌山市の人口より多いんだからねぇ(笑)。http://glin.jp/rnk/cj.html


周囲の交通渋滞、食料や寝る場所の問題、LSDや出産・・・。これほどの人数が集まっているのに大きな混乱がなかったのは、奇跡的なことかもしれない。そういった音楽以外のシーンがかなりあって、ちとウンザリする(笑)けど、この時代の気分を表現したいという意図はわかる。


ジョー・コッカーの「With a little help from my friends」か・・・。*2この時代の気分なんだなあ。


私流に言えば、この時代の気分は「We」だ。この頃はまだそれを信じることができたんだね。幻想だとわかっていても、夢を信じることの方が遥かに素晴らしい生を生きることができると思えた時代だった。まー、幻想と言えば何だって幻想なんだし(笑)。
♪たとえ誤解や錯覚でも 心を開いて(ZARD「心を開いて」)*3


その気分の根っこには管理されることへの嫌悪感があった。*4「We」は迫り来る管理社会に対抗する唯一の武器のように思えたのだ。


しかし、1970年を境にこの時代の「We」の気分は急速にしぼんで行く。そして、音楽も・・・。「We」の音楽がリアリティを持つことができた時代は1970年で終わる。「We」はむしろシラケの要素でしかなくなってしまい、音楽は「You and me」にシフトしたのだった。「We」の時代を知る者にとっては淋しい気もするが、これは仕方がないことだ。変わったのは時代の方なのだから。


イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」にこんなフレーズがある。
So I called up the Captain, 'Please bring me my wine'
He said, 'We haven't had that spirit here since 1969'

「ワインを頼む」とキャプテンに言うと、
彼は言った、「もうそんな酒(精神)はありゃしないさ。1969年からね。」


Woodstock, August 1969, 3days of Peace & Music


1969年の時代の気分に浸った1日だったなあ(笑)。

*1:doaのアルバム「deadstock」ってタイトル、Woodstockを意識してるような気がしてならないんだが・・・。

*2:ビートルズの傑作アルバム「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」に入ってる曲だ。

*3:もちろん、坂井泉水さんが 歌った意味合いとは全く異なるのだが。

*4:ベトナム戦争に徴兵で駆り出される米国の若者たちを目の当たりにして、それは恐怖心に近いものだったと思う。だから、管理社会への嫌悪感は情緒的なものではなく、切迫したリアリティを伴っていた。