lonelinessとaloneness

伊那谷の老子 (朝日文庫)古来、なぜ多くの人が月の光をうたったのかわかったような気がする。なぜならこういう月の光は人にloneliness(淋しさ)でなくてaloneness(自分ひとりだという意識)を深く感じさせるからだ。


伊那谷老子」(加島祥造著)を読み始めたら、こんなくだりがあった。lonelinessという言葉から、すぐZARDのデビュー曲の「Good-Bye My Loneliness」がピンときて、すこし孤独について考えさせられた。


この「Good-Bye My Loneliness」は「独りぼっちにさようなら」だから、孤独というわけではないけれど、坂井泉水さんの歌詞には孤独を扱ったものが多い。最も強烈に孤独感が迫ってくるのは「眠り」だろう。また「マイ フレンド」の

♪ひとりでいる時の淋しさより 二人でいる時の孤独の方が哀しい

というところは、私が最も好きなZARDの歌詞のひとつである。坂井さんの描く孤独は「都会の孤独」だが、私が「Today is another day」のアルバムが好きなのは、それが溢れている歌が多いからだ。


そんなことを考えていると、ふとlonelinessはalonenessとは全く違うということに気づいた。独りでいることを淋しいと思い、孤独と感じる人も居るだろうが、加島さんはalonenessを淋しさとは無縁の、むしろ好ましいものと捉えているのだ。その点は私も同じで、独りで居るのを楽しむ方だから良くわかる。山歩きなんか、複数で行くのも楽しいけど、単独行に勝る楽しみはない。まー、最近は行かないけどね(笑)。


加島さんの言うalonenessには人は居ないけど自然が居る。人と自然との交感を含意する言葉なのだ。「なぜ多くの人が月の光をうたったのか」やっと私にもわかった気がした。


人工の情報に溢れかえった街中では、alonenessの状態に身を置くことは難しい。伊那谷に引っ越せれば実現可能かもしれないが(笑)。せめてこの本でスローな時間を味わうことにしよう。