悲しみと感謝と:ZARD”What a beautiful memory〜forever you〜”(13

メンバー退場後も拍手は鳴り止まず、やがてそれはアンコールを促すものに変わりました。かなり長い拍手が続いた後、メンバーが再登場。そしてアンコール第1曲「Forever you」の演奏が始まりました。ライブの熱気をそっと鎮めるような、心に染み入る静かなイントロでした。
以前書いたことがありますが、私にとってこの曲は「坂井さんがそこに立っている」ような曲ですから、普段でさえ、聴くとこみ上げてきてしまうのですが、もうこの時は涙が止まりませんでした。


ここでMCが入り、5人全員のゲストアーティスト(綿貫さん、浅岡さん、徳永さん、大野さん、葉山さん)が呼ばれ再びステージへ。そして、「皆さんもご一緒にうたいましょう」という呼びかけとともに「揺れる想い」、「負けないで」が続けて演奏されました。プレイヤー全員による熱く魂のこもった演奏でした。


この2曲、最初は悲しみと感謝の、そして途中からはただ感謝の涙がとめどなく流れる中、私は声を絞り出して歌いました。


「負けないで」を歌い終られると、坂井さんが「今日はどうもありがとうございました。」と挨拶されました。その後、いつもなら「また会いましょう!」という言葉が入るのですが、今回はそれがなく、寂しい思いがしました。やはり、これが最後なのか・・・。今を逃したら、坂井さんに感謝の気持ちを直接お伝えする機会はない。それは切羽詰まった感情でした。
そして、大歓声とともに演奏が終わった瞬間、ありったけの大声で坂井さんに「ありがと〜う!!」と叫びました。


実は2004年ライブの時は坂井さんを応援しようと「いいぞ〜!」とか「サイコー!」とか、そして最後には「ありがと〜う!!」と叫びまくっていましたが(笑)、追悼ライブでは心の中で「坂井さん、ありがとう」と黙礼するのが常でした。しかし、今回はそのどちらとも違っていました。そこにあったのは、どうしても坂井さんに感謝の気持ちお伝えしなければ、という切迫した思いでした。


大歓声と拍手で会場の盛り上がりがピークに達した時、古賀さんのMCが入りました。その中で、古賀さんは「坂井さんはずっと私たちのそばに居ます。」。と言われたのです。そして、呼びかけるように「坂井さ〜ん、ありがとうございました。」と。
そうだ、坂井さんは今も居られるんだ!
第2回に書いたように、脱追悼という演出に私はずっと違和感を感じていたのですが、この古賀さんの言葉にやっと救われた思いがして、深く心に染みてきました。


その後、坂井さんの写真を囲んでメンバー全員が会場をバックに記念撮影が行われ、観客は総立ちで大きな拍手で応えました。


メンバーがステージを降りると、スクリーンには初めて見る坂井さんの写真が映しだされました。斜め前方右からのお顔のアップ写真で、何かを訴えておられるように射るような視線で真剣にこちらを見つめておられました。
やがて浮かび上がってきたのは「君のことをずっと、ずっと、ずーっと思っているよ。」という自筆メッセージでした。もちろん、写真とメーッセージは本来無関係なのでしょうけれど、余りにも強烈で、私は感極まってしまいました。
坂井さん、私もあなたのことを決して忘れません。


「Forever you」のオルゴールが流れる会場を「坂井さん、ありがとう」の声が埋める中、ライブの終演が伝えられてからも席を去ることができず、感動と溢れる涙とともに立ちつくしていました。


(終わり)