負けないで(その2)

2月11日の日記の続きだ。相変わらず独断と妄想のカタマリだが(笑)。

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坂井泉水さんの歌詞には「励まし」があるものが多いが、「励まし」と言っても、「そっと背中を押してくれる」という感じで、元気溌剌でストレートな応援ソングはそれほど多くない。

アルバム「揺れる想い」から「OH MY LOVE」へという女性性の成熟の過程は「forever you」で頂点に達する。その後作風は一転して、深い内面性を湛えるようになり、泉水さんの心のひだが感じられる傑作「TODAY IS ANOTHER DAY」が生まれたのである。これまでの「切なさ」という情緒的なものが、ここでは「癒し」へと昇華されている。*1

そして、その次のアルバムが「ZARD BLEND SUN & STONE」だ。私はこのアルバムは「負けないで」的なるものへの訣別宣言ではないかと考えていたし、過去の「遺産」を総括して新たな道へ進もうとする泉水さんのチャレンジとして、密かにエールを送っていた。*2

次のアルバム「永遠」(1999.2.17)でも、ストレートな励ましソングはなかったのではないだろうか。だから、その半年後にCRUISING & LIVEが行われ、「負けないで」が歌われたことは、私にとっては予想外であり、ある種の衝撃と感慨を伴う体験だったのである。

もちろん、ZARD初ライブだからということもあるだろう。この「代表曲」が当然歌われるものとして受け止めているファンの方が多いだろう。しかし、私は「あ、吹っ切れたんだな」と感じた。もはや、巨大な存在を特別に意識することもなく、対等に向き合える場所へ来たに違いないと。もう「負けないでのZARD」ではない。私にとってのライブ盤の「負けないで」はそういうものとしてある。だから「負けないで」は私はライブ盤の方が好きなのである。

*1:昇華という言葉を使ったが、別に転化でもかまわない。「切ない曲」はそれはそれで良いのである。

*2:こうした意味のことを当時MLで書いた記憶があるが、そのメールは残っていない。