もしZARDがJANEだったら (その2)

一般に、プロジェクトというのは、何かコトを成し遂げるために、既存の組織をまたいでいろいろな分野の専門家が組織された形態を指す。メンバー固定の場合もあるが、役割を終えればメンバーから外れていくケースも多い。しかし、普通、固定メンバー(コアメンバー)がゼロというプロジェクト組織はない。実際には、「プロジェクト・メンバー」には「流動的なメンバー」と「コアメンバー」が居るわけである。

活動スタイルの「実態」面から見れば、ZARD、B'z、倉木麻衣さんはプロジェクトだと思う。そして坂井さん、稲葉さん、松本さん、倉木さんはコアメンバーなのである。「ZARDのメンバーは坂井泉水さんひとり」ではなくて、正しくは「ZARDのコアメンバー坂井泉水さんひとり」ということになる。

いずれも(スタート時点はともかく、現状として)実態はプロジェクトだとすると、ZARD、B'z、倉木麻衣というネーミングで表されるものは何なのだろうか?

通常、B'zは稲葉さんと松本さんからなるB'zという「グループ」であり、倉木麻衣倉木麻衣さんというアーティスト「個人」として認識される。「B'zというプロジェクト」、「倉木麻衣プロジェクト」(という実態面)が意識されることはない。これは名称としてコアメンバーが表示されているからだ。

ところがZARDは独特だ。名称は明らかにグループ向けのネーミングだから、「ZARD坂井泉水さんというアーティスト個人」とは言いにくい。ZARDは個人を表すには抵抗が強すぎる言葉だ。*1かといって固定的なメンバーのグループという形態は発足後しばらくして解消されてしまったから、「グループ」とも言えない。つまり、ZARDの場合、コアメンバーが表示されていないという特色を持っているわけである。それで、プロジェクトの名称ということになるわけだ。

坂井さんはよく「ZARD坂井泉水です。」と言われるが、このZARD坂井泉水の間の「の」はなかなか玄妙である(笑)。「ZARD坂井泉水」ではないから同格の「の」ではないし、グループの一員としての包含関係を示す「の」でもない。正確に言おうとすれば、ZARDというプロジェクトの(コアメンバーである)坂井泉水」ということになるのだろう。

考えてみれば、「名前」というのは不思議なものである。実態としては皆プロジェクトであっても、コアメンバーをネーミングに用いるかどうかで人々の認識がずいぶん変わってきてしまう。

もしZARDが仮にJANEというネーミングだったら、「JANEの坂井泉水です。」となったはずだが*2、その場合には「JANE=坂井泉水」として認識されて、坂井さん(というアーティスト個人)もJANEという愛称で呼ばれることになっていたかもしれない。やっぱり、ZARDの方が良いって?そりゃー、そうだよね(笑)。

(終わり)

*1:それは例えば「ZARDさん」という呼び方の居心地の悪さに表れている。

*2:もちろん、JANEでなくても女性名なら何でもよい