「淡い雪が溶けて」と「雨が降り出す前に」

今回のZARDのシングル「今日はゆっくり話そう」のカップリング曲(「淡い雪が溶けて」と「雨が降り出す前に」について、これまで書くゆとりがなく、だいぶ遅くなってしまったが書いておこう。

「淡い雪が溶けて」を一言でいうなら「悲しみの結晶」というところか。透き通った美しさが心に染みる。

「言い訳を考えて途中で何度も引き返そうと思った」という冒頭のフレーズや、「古い日記を読み返してみると他人(ほか)の人の話のようで」というところなどは、情景が鮮明に喚起され、まるで言葉が刺さってくるようで切ない。「今日はゆっくり話そう」とは対照的な楽曲で、カップリングとしてのバランスが絶妙だ。

「雨が降り出す前に」は「ケレン味」かな。

アレンジが葉山たけしさんということで話題になっている。たしかに、良い意味でケレン味のあるアレンジは新鮮である。ただ、私の好みからすると、「淡い雪が溶けて」の方になる。以前のZARDっぽいという声も聞くが、(部分的にはそういうところもあるけれど)全体としては私はZARDの楽曲というより、別のアーティストの曲のような印象を受けたというのが正直なところだ(もちろん、これは良い悪いの問題ではない)。ケレン味という観点からは「今日はゆっくり話そう」と好対照をなす楽曲だろう。

このCDは凄い充実感がある。それはどこから来るのだろうか。たぶん、個々の楽曲のクォリティの高さ以外に、「今日はゆっくり話そう」の力強い明るさと、「淡い雪が溶けて」悲しい美しさ、また「今日はゆっくり話そう」のケレン味のない堂々たる力感と、「雨が降り出す前に」のケレン味の効いたアレンジが、互いに反発し合いながらバランスしている、その対照の妙にもあるのだろうと思った。

ZARDらしさという面では「淡い雪が溶けて」が一番かな。その次が「今日はゆっくり話そう」で、「雨が降り出す前に」はこの3曲中で最もZARDらしくないと感じた。ZARDらしさの捉え方は、人によってずい分違うものだねぇ(笑)。