「麗しき花実」

風さんがBBSの方で教えてくれたのだが、朝日新聞の連載小説「麗しき花実」の挿絵は坂井泉水さんがモデルになっているという。


私は朝日を取っていないので直接確認できたわけではないが、ネットで調べてみると、確かにそのような記載があった。ttp://qlove-1947.at.webry.info/200902/article_13.html


読んで驚いたことが3つある。まず、挿絵を書かれているのが中一弥さんという98歳の画家だということ。98歳!この歳で「外界」に興味を持ち続けておられること自体すごいことだ。これはタダモノではない。
第2に、坂井泉水さんをご存じだったこと。いくら亡くなったときに大々的に報じられたと言っても、この歳になると昨日のことは全然憶えていない状態になっているのがむしろ普通だと思う(昔のことはちゃんと憶えているのだが。)。よほど強烈なインスピレーションを受け、いつか作品にしようと、目にするところに飾っておられ、そして小説の「麗しき花実」というタイトルを知ったとき、主人公のイメージと坂井さんがピタリと重なったのではないだろうか。
第3に、ああ、坂井さんはこういう形でも、人の心の中に生きておられるのだなと。その驚きが胸を熱くした。


「(「麗しき花実」の主人公の)理野を描くときはいつも泉水さんの顔が頭にある。写真を見て、憂いを含む顔に心引かれまして。日本髪を結わせてスケッチしたかった。」と語る老画家は、理野をとおして坂井さんを書いておられるのだろうか。
このように超ご高齢の方をも引き付けてしまうって何なんだろう。魅力という陳腐な言葉では語れない何か。坂井さんの凛とした眼差しが思い出される。


挿絵画家・中一弥 ―日本の時代小説を描いた男 (集英社新書)

挿絵画家・中一弥 ―日本の時代小説を描いた男 (集英社新書)

この本で中さんが語った言葉が引用されているブログがあった。写生ばかりを命じられてきた中さんは、人物を写真に撮ったように描けると言いきっておられる。しかし、「これではいけない。そこには夢というか、膨らんでいくイメージが欠如しているんです。・・・でも、夢や想像力の領域を広げる努力は、最後まであきらめたくはありません。」
最後の言葉に感動してしまった。