春隣

今日は立春坂井泉水さんの誕生日、2月6日はもうすぐだ。


最近、春隣(はるどなり)という言葉があることを知った。俳句の冬の季語で、春がすぐそばまできていることを言うのだが、一番寒い時期なのに春隣かと思うと、気持ちも明るくなるから不思議だ。春を待ち望む気持ちが強く出た美しい情緒のある言葉だと思う。


立春は似た言葉だが、暦の上にせよ「春が来た」ことになるわけで、春の季語である。厳寒のさ中に立春を迎えるのは、旧暦と実際の季節のズレによるのだろうが、そのズレがまた日本人の微妙な季節感を生んでいるような気がして面白い。


私が日本人の微妙な季節感を思う時、必ず思い出すのがZARDの「揺れる想い」の一節である。


♪夏が忍び足で 近づくよ きらめく波が 砂浜 潤して


夏は「近づいている」のだから、まだ夏ではない。では、いつ頃の季節を歌ったものなのだろうか?ポカリのCFは真夏の映像だが、清涼飲料だから暑い方が良いわけで(笑)、ここは純粋に歌詞としての話だ。


考えられる時期のうち、最も早いのは「夏も近づく八十八夜」あたりか。これだと5月上旬だから、いくらなんでもまだ海辺は二人で歩くには寒すぎるな(笑)。


私がイメージするこの歌のステージは、爽やかな空気感が漂う夏本番に至る直前の、まだあまり人が居ない浜辺。つまり、本格的な暑い夏が来る前の「夏隣」の歌である。梅雨明けとともに夏本番というのがパターンだから、カラッとした梅雨の晴れ間なのかなと思う。


それにしても、
「夏が忍び足で 近づくよ」
とは何と微妙な表現なのだろう。これは決して街中の描写ではあり得ない。季節感だけでなく、周りの気配さえ感じさせる巧みさにはいつも感嘆してしまう。