「星のかがやきよ」の無常

坂井泉水さんは、「星のかがやきよ」についてのインタビューで、「何かが終われば また 何かが始まる 哀しんでいるヒマはない!スタートしよう」という部分に込められた思いとは?」という質問に対して、
「時は"無常"であると…。」と答えておられる。(WEZARD vol.28)


あらためてこれを読んで驚いた。
日常会話にそれほど頻繁には登場しない、いわば「無常」という重い言葉が使われていることがひとつ。宗教家や哲学者ならともかく、坂井さんの年齢で自作にこういうコメントを残すなんて凄いことだ。いきなりグサリッとやられた感じだった。
それに、「星のかがやきよ」は「名探偵コナン」オープニング・テーマということもあって、ポップで明るい曲調に仕上げられているが、それと裏腹にそんな重い意味が隠れていたのか、という思いである。


言うまでもなく「無常」とは、常なるものは無い、全ては変わっていき、滅んでいく。永遠なるものなど無い、ということだ(そうなると、ZARD作品「永遠」の意味はどうなるのかが問題になるが、これについては後述したい。)


禅に「無常迅速」という言葉がある。全文は次のような句である。
生死事大(しょうじじだい) 光陰可惜(こういんおしむべし) 無常迅速(むじょうじんそく) 時不待人(ときひとをまたず)
要するに、刻々と全ては壊れ、滅んでいくのだから、ボーッとしているヒマなんかない。寸暇を惜しんで修行に励め、ということだ。http://www.rinnou.net/cont_04/zengo/091201.html 


坂井さんがこの禅語をご存じだったかどうかはわからない(し、わからないことを憶測しても仕方がない)が、「星のかがやきよ」のこの部分のメッセージとほとんど同じ意味と考えて良いと思う。ただ、坂井さんが「無常」と言われる時、人生の意味・目的を否定するニヒリズムや諦めという意味合いは無いことは一応押さえておくべきだろう。
そんなことを嘆いても仕方が無いと前向きに捉えておられることは「哀しんでいるヒマはない! スタートしよう」というフレーズから伺える。

(つづく)