武道館ライブの感想 2

武道館のステージにあったものは、余裕が緊張感をコントロールする完成度の高い空間だった。コントロールされた緊張感と言っても良いが、実はそれが見る側にはぎこちなさのない自然体に見えるのである*1。MCにそれが典型的に表れていたが、この余裕と緊張感の適度なミックスは武道館ライブのすべてにわたって感じられた。

武道館のライブは、私が聴いたこれまでのライブとの対比で言えば、初日大阪の緊張感を孕んで内へ向かう凝集力と、名古屋の余裕溢れた解放感・幸福感とがうまくバランスしたものになっていた。それはライブのひとつの完成形ではないだろうか。

武道館ライブは、これまでのZARDの活動の延長線上には存在しない奇跡的出来事だ。その奇跡に坂井さんはチャレンジし、とうとうやり遂げた。しかも、このように非常に高いレベルで!武道館での感動はもちろん歌唱の力自体によるものなのだが、もうひとつ、坂井泉水さんが今、遥かな高い夢の頂きに到達しているのだという感慨が、さらに私の胸を熱くさせたのだった。

また、武道館では「止まっていた時計が今動き出した」を歌い終わった後、「ちょっとだけなんですけど、新曲を・・・」とMCが入った。その瞬間、武道館は「うおーっ!」というどよめきで満たされ、頂点に達した興奮の中で静かに「かけがえのないもの」が始まった。鳥肌が立つような感動だった。そしてラスト部分のすごい迫力!

泉水さん、すごいよ!何てすごいんだろう!こんなにもファンでいることの幸せと、誇らしさを感じたことはなかった。泉水さん、ありがとう!

お別れのとき、泉水さんは「また会いましょう!」と言われた。きっとまた、素晴らしいライブを見せてくれるに違いない。

とにかく幸福な一日だったなあ・・・。

おわり

*1:平田オリザ「演技と演出」講談社現代新書、p55-74。http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061497235/qid=1090684120/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/249-1168231-0813908 リラックスしつつ意識が集中されて身体の各パーツがコントロールされているという難しい状態が自然体として見えるのだという。実は、行きの新幹線で読んだばかりだったのだが、それを泉水さんが見事に実現されておられたので驚いた。