言葉の力
万葉の古歌のように時代も背景も違う歌がわれわれの心に響いてくるのはなぜか。
それは「日常生活の非常にささやかな喜び、悲しみ、怒り、絶望といったものを文字にした」、つまり「日常生活の退屈な繰り返しを見つめ、そこから反転して自分の心に見入りつつ歌われたささやかな表現」だったからだ、と詩人の大岡信は言う。「大げさな言葉はわれわれをあまり感動させず、つつましく発せられたささやかな言葉が、しばしば人を深く揺り動かす」のだ、と。
これを読んで私はZARDの「Seven rainbow」の「ささいな出来事いっぱい作ろう」という歌詞を連想してしまった。「ささいな出来事いっぱい作ろう」というのはいささか奇妙な感じのするフレーズだと思っていたが、「ささやかな」なら意味的にはピッタリくる。ただそれだと曲に乗せられないから坂井泉水さんは「ささいな」としたのかな、と。もちろん、これは私の勝手な憶測に過ぎないが。
- 作者: 大岡信
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1985/02
- メディア: 文庫
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(つづく)