朝日の当たる家

坂井泉水さんが森進一さんに歌詞を提供した「さらば青春の影よ」の印象的なイントロ、どこかで聴いたような気がするな・・・と初めて聴いた時から思っていたのだが、アニマルズ(The Animals)の「朝日の当たる家(House of tne rising Sun)」だと、ようやく最近思い至った(似ていると言っても、イントロのほんの一部なんだが。)。

そんなことで、「朝日の当たる家」の衝撃を思い出した。「朝日の当たる家」というのは、ニュー・オリンズの男娼館の名前で、この歌の主人公は黒人の男娼という設定なのである*1。「おふくろ、子供たちに言ってくれ。おれのしたことをするなと。」と歌うエリック・バートンの叫び声は、黒人差別が根強く残る当時のアメリカ社会に突き刺さったに違いない。

当時のアメリカでは、プレスリーだの、コニー・フランシスだの、豊かなAmerican way of lifeを謳歌するノー天気な(と言って悪ければ、伝統的価値観に立った無邪気な)歌が幅をきかせていたわけだが、そこにビートルズストーンズ、アニマルズらのバンド形式のロックがどっと流れ込んだ。British invasion(ブリティッシュ・インベイジョン。イギリスの侵入)というそうだ*2

British invasionは単なる音楽だけの問題ではなく、アメリカの若者の価値観、ライフ・スタイルに革命的な影響を与えた。彼らは伝統的価値観に背を向けた。そして、求めたのはfreedomであった*3。それが、ベトナム戦争の影響でlove & peace へとつながっていく。

1950年代と60年代のロックを大きく分けるものは、社会に対するアプローチの差だ。そこには、価値観の断絶がある。「朝日の当たる家」を思い出して、あらためてそんなことを考えた。

最近、「ロック誕生50年企画」と称して1950年代を中心とするプレスリーらの歌をオムニバス・アルバムで売りに出している。世のオトーサン方のサイフとノスタルジアを当てこんだ商売だが、どうなんだろうね。少なくとも私は買わないなあ(笑)*4。1970年プラスマイナス5年の時代のロック名曲集でも出してくれないかなあ。

あ、今日の日記はZARDにあまり関係なかったね(笑)。
 

アニマルズについて
http://kobe.cool.ne.jp/topgear/analogue/animaltracks.htm
「朝日の当たる家」試聴。音が古めかしいのはしかたないね(笑)。
http://www.hmv.co.jp/Product/Detail.asp?sku=987288

*1:アニマルズより先のJoan Baezの歌では主人公は女性、つまり娼婦だった。

*2:アニマルズは1963年に結成され、1964年にこの「朝日の当たる家」をヒットさせたブリティッシュ・ロックのルーツのひとつになるバンドだ。なお、ビートルズのデビューは1962年、ローリング・ストーンズが1963年。

*3:Joan Baez, Peter Pole & Mary らリベラルな傾向の米国のミュージシャンが、公民権運動(黒人解放運動)への支持を通じて、British invasionの地ならしをしたような気がするが、調べたわけではないので違っているかも。

*4:たぶん、ほとんどの曲は一応知ってるだろうし、懐かしさを感じることも事実なのだが、私の感覚からすると「古い」。ヲイ、ワラウナヨ(笑)。若い人たちが演歌に対して持つ気恥ずかしさに似ているかも知れないな。