DVD 「Le Portfolio」

Le Portfolio 1991-2006 [DVD]

Le Portfolio 1991-2006 [DVD]

DVD「Le Portofolio」、一気に見てしまった。
私は、PV集に少し手を加えたものだろうという自らの予想を恥じた。PVを時系列的に並べただけなら簡単だが、坂井泉水さんならきっと「そんなのつまらない」と言われるに違いない。坂井さんはそんな安易なものを考えたことすらなかっただろう。表現者としての坂井さんのこだわり、心意気を理解していなかったことが恥ずかしいのだ。
これはZARDのPV集なんかじゃない。とても見ごたえのある一個の素晴らしい映像作品で、PV集を期待していたファンには期待はずれかもしれないが、私としては120%満足している。


まずブックレットが良い。坂井泉水さんの歌詞と映像の組み合わせから構成されたこの本は、各ページに詩情が溢れ、独立の作品として見ても評価できる素晴らしい内容だ。私の考えでは、この種の本というのはどれだけ余韻を残せるか、読み手のイマジネーションを喚起できるかが価値である。つまり、歌詞と映像という「目に見えるもの」から、どれだけ「目にみえないもの」を生み出すことができるかなのだ。そして、このブックレットは十分その要素を持っていると思うのである。


DVDを見ていると、PVもあるが自然体の坂井さんの映像もあり、こんな映像があったのかと驚かされる。確かにファンとしては、坂井さんの映像を見るだけでも楽しいが、これを単なるPV集として評価すべきではないと思う。この作品のコンセプトがPV集でないことは明らかである。それぞれのPVは、この作品全体の中ではあくまで素材のひとつに過ぎない。


見ていて私はそれぞれの映像のシークエンスを「詩篇」とでも呼びたい思いにかられた。ブックレットと同様にDVDもイマジネーションを喚起させられて飽きることがない。これは映像によるアンソロジーであって、全体としてはひとつの優れたアート作品ではないか、と。


CDを何度聴いても飽きないということは別に珍しいことではないけれど、映像というのはすぐ見飽きてしまうものだ。これは映像は余りに強烈すぎて音にくらべて想像力の果たす余地が少ないからだ。恐らく私にとってこのDVDはその稀な例として、繰り返して楽しむことができる映像作品になりそうである。もちろん、そのためにはこちら側の「感性の扉」が錆付かないようにしておかなけりゃならないが(笑)。