一周忌追悼特番「ZARD坂井泉水の永遠の今」

昨夜オンエアされた一周忌追悼特別番組「ZARD坂井泉水の永遠の今」は良い内容だった。週刊誌的な興味本位の切り口ではなく、作品などから坂井さんのアーティストとしての側面を紹介しようとするもので、好感が持てた。


昨年、世間一般の人たちは、何故これほど多くの人が坂井さんの死を悲しんでいるのかと途惑った。その原因を探ろうとした「クローズアップ現代」では、ファンの側からZARDを語らせるという手法が取られた。そこで浮かび上がってきたのは坂井さんの歌詞の力、歌詞に魅力があるということだったが、昨年の段階では、歌詞の魅力について深く掘り下げた番組はまだ無かったと思う(あったとしてもせいぜい「負けないで」だけなのではないか。)。


昨夜の特番ではファンは登場しなかった。ファンの側からZARDを語らせるというアプローチから、作品自体に語らせるというアプローチにシフトしているのである。それは多くの作品の聴かせどころの歌詞を紹介する時間を長く取っていたことに表れている。
この1年で、ZARD WHO?(ZARDって誰?)から ZARD WHAT?(ZARDって何なの?)へ、つまり坂井作品はキチンと正面から評価するべき対象へと変わったのだ。私にはそれが一番嬉しいことだった。


また、映像や嶋田さんの証言による楽曲制作の現場(スタジオ)やプロセスの紹介も良かった。坂井さんが普通におしゃべりしている生声、初めて聞いたのでビックリした。細いけれどキビキビしていて少し早口だったのは意外だった。ただ、もう少し坂井さんの楽曲制作へのこだわりを紹介してくれれば、もっと良かったとは思う。


闘病中、他の入院患者に「負けないで」を歌ってあげたという感動的なエピソードや、ひとつ夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうというスタッフの証言など、坂井さんの「人間性」についての話や、好きなのはドラム、ベース、ギターの順だと言われ、自らドラムを叩くポーズを取るところなども興味深かった。


最後に紹介されたのが代々木ライブでの「素直に言えなくて」だったのには意外で驚いたが、あまり知られていないZARDのハードな一面を紹介しようとしたのだろう。同時に、それはメンバーたちの白熱のプレイを映し出し、ZARDの追悼ライブがいわゆる「フィルムコンサート」などではないことを示すことにもなったと思う。


このように、「アーティストとしての坂井泉水」を様々な角度から取り上げ、とくに自ら「詞を、言葉を大切にしてきました。」と言われている坂井さんの歌詞に焦点を当てたこの番組の意義は大きいと思う。できれば深夜ではなく、昼間の時間帯に是非再放送してもらいたいものである。