代々木ライブ その8

最後のMC。葉山たけしさんが紹介された。


「あの微笑を忘れないで」:この曲を初めて聴いたときの衝撃、今でも思い出します。すごい名曲だと直感しただけではありません。それ以上に、この曲がアルバム「HOLD ME」の1曲として納まっていることに驚嘆したんです。こんな素晴らしい曲をシングルにしないなんて・・・、ZARDって何だ?ZARDの凄さ、底知れぬ奥の深さに初めて出会った瞬間でした。


坂井泉水さん、私は「マイ フレンド」であなたと出会い、「サヨナラは今もこの胸に居ます」の声でファンになり、「心を開いて」で歌詞の力に眼を開かされ、そして「あの微笑を忘れないで」がトドメの一撃になったんです(笑)。もちろん、これは大雑把な言い方ですけどね。


坂井さんはこれまで沢山の思い出を作ってくださいました。本当にありがとう。私がこの日記を書いているのは、ひとつにはその思い出を忘れないようにしたいからなんです。きっとこれからも素晴らしい思い出を沢山作ってくださいね。


「負けないで」:「あの微笑を忘れないで」は明石昌夫さんのアレンジだから、葉山さんの登場はそれからという選択もあり得たはずだが、やはりライブの高揚感を重視したのだろう、「あの微笑を忘れないで」と「負けないで」はシームレスに演奏された。


実は私の中では「負けないで」はベスト30に入るかどうかという曲だった。ZARDにはそれだけ名曲が多いということでもあるけど、ヒネクレ者の私には元気ハツラツ直球ど真ん中といった感じがどうも苦手だったのだ。これまでのライブではもちろんノリノリだったけど・・・。


でも、今回は違った。手を叩き、拳を突き上げる私の心に、坂井さんの「負けちゃだめ。頑張って!」という気持ちがダイレクトに伝わってきた。ありがとう、ありがとう。涙がボロボロこぼれた。


何百回となくこの曲を聴いてきたが、こんなことは初めてだった。これまでと何が違ったのだろう?一周忌であり、ツアー最終日のエンディングということもあるかも知れない。しかし、自分では自分の置かれた境遇の変化が最も大きいと思っている。
私は今年定年を迎えた。健康上の不安を抱えながらも一応仕事は続けているから、それほど大きな変化ではないとも言えるのだが、やはりメインステージ上には居ないのだ。振り返って自分の居場所のないステージを見るのはやはり寂しい。
それなりに活躍しているときは、この曲の真価を感じられなかったのだが、これまでの自分や他人とちょっと違う立場に居る自分に気づいたとき、しみじみと心に染みてくるのだと思う。
「負けないで」が多くの人を励ましてきた偉大な歌であることは「事実として」はわかっていた。しかし、今回初めて「自分の心で」この曲を正面から受け止めることができたのだと思う。


坂井さん、ありがとう。投げないでもうちょっと頑張ってみるよ。


あなたは亡くなった後も、こんなにも人を励まし続けてておられるんですね。その嬉しさ、ありがたさに涙をこらえることができませんでした。


「きっとまたZARDのコンサートでお会いしましょう。」とナビゲーター古賀涼子さんの声。いずれまた坂井さんと会う機会を作ってくれるということだろうな。


私は坂井さんとの3時間の対話を終え、「坂井さん、ありがとう。本当にありがとう。」とステージに向かって頭を下げ、「ありがとう。」がこだまする場内を後にした。