坂井さんの「匂い」 (2)

そもそもZARDはグループなのか、坂井泉水というアーティスト個人なのかはっきりしなかったし、テレビに出ないからルックスはイマイチなのかと思うと超美人だし、存在自体に既存の「常識」からはみ出す部分がある。


ZARDの音楽に受けた衝撃がメガデス脱退のきっかけになったというマーティ・フリードマンさんは、ZARDというのは「アイドル歌謡ヘビーメタル」という「あり得ない組合わせ」だと言われている(「い〜じゃん!J-POP だから僕は日本にやって来た」、P216、日経BP社)。もちろんこれは褒め言葉である。マーティーさんは、異質なものの組み合わせから新たに生み出された美しさを言っているのだ。「アイドル歌謡ヘビーメタル」かどうかはともかく、坂井さんの透明感のある柔らかな声とハードロックという組み合わせは、私にとっても衝撃であり、新鮮だった。


私は坂井さんのカバーによるブルースナンバー「Black Velvet」と「This Masuquarade」を聴いた時、正直言って坂井さんの声はブルース向きじゃないなと思った。もっと太めのしわがれ声でないとブルースっぽくないと思っていたので、坂井さんの声はきれい過ぎてギャップを感じたのだ。でも、ブルースに対する先入観でフィルターを掛けてはいけないと気付いて聴くと、坂井さんの「ブルース」というのはまさに異質なものの組み合わせ。それがまた良いんだなあ(笑)。


(つづく)