静のヴォーカル

坂井泉水さんにとって、渋谷公会堂シャーデーのコンサートをご覧になったことは、その音楽人生に決定的ともいえる影響を与えた重要な出来事だった。例えば、


「ヴォーカリストになりたいな、と思ったのは確か高校生になってからだったと思いますけれど、シャーデーのコンサートを観た時ですね。今まで思っていたロックヴォーカリストのスタイルとは全く違う・・・静と動でいえば“静”というヴォーカルで。コンサートといってもみんなが座ったままクラシックのように聴いていて、“ああ、こういうパターンもあるんだな”と思ったんです。同じ女性として、ああいうヴォーカリストは格好いいなと思って・・・。漠然とですけど、私も“静”のヴォーカリストになれればいいな、と。」。
更に、シャーデーは「最も影響を受けたアーティストです」と。(Ozmallホームページ 2001.3.16。「Flash Back ZARD Memories」P7やその他の雑誌にもOzmallと同様の記載がある。)


つまり、「シャーデーのコンサートを観た時」、「ヴォーカリストになりたいな、と思った」と言われているのである。これが坂井さんの夢の原点だと思う。


そして更に、この時の坂井さんの感動は、坂井さんのヴォーカル・スタイルとライブのスタイルという重要な2点に大きな影響を与えたと私は考えている。
坂井さんのボーカルスタイルについては4/17のこの日記でも触れたが、何よりも「伝えること」を重視された坂井さんが意図的に選択したのが、いわゆる「熱唱型」とは反対の、都会的な抑制された(感情をこめ過ぎない)スタイルだった。まさに「静のヴォーカル」である。


また、坂井さんのライブではほとんど「パフォーマンス」がないが、苦手な「パフォーマンス」などのない「静のヴォーカル」でも十分感動を与えることができるのだ。
「今まで思っていたロック・ヴォーカリストのスタイルとは全く違う・・・静と動でいえば「静」というヴォーカルで。・・・コンサートといってもみんなが座ったまま静かにクラシックのように聴いていて、”ああ、こういうパターンもあるんだな”と思ったんです。」


2004年ライブ後のインタビューで、「今回のライブで最もこだわったポイントはどこでしょうか?」という質問に答えて、坂井さんは、
「アプローチは違うけれどCDの音源に遜色ないようにしたいと思いました。そしてステージはロックとクラシックの融合のようなシンプルでお洒落な感じにしたくて・・・」と言われている。WEZARD vol.24


「ああ、こういうパターンもあるんだな」。恐らく坂井さんのシャーデー体験が、ZARDの「ロックとクラシックの融合のような」ライブスタイルのコンセプトにつながったのだろう。


坂井さんがシャーデーのコンサートに感動されたのは高校生の時。20年余りその時の夢を持ち続け、2004年ライブで実現されたのだ。その時の坂井さんの思いはどれだけ大きかっただろう・・・。