渋谷ZARD Screen Harmony夜の部(2)

6時に渋谷区役所が閉門されるとのことで、少し前に追い出された(笑)。だいぶ増えていた会場前の人を眺めていると、やがて整理番号順の立て札が立てられ、1100番台の私はずっと後の方で入場を待った。空はきれいな「泉水晴れ」になっていて、雲が日没前の斜め下からの陽の光で輝いていた。


キース・ジャレットのピアノが鳴る会場は、もう後の方しか座席が残っていなかったが、端ではなかったので気にならなかった。
坂井泉水さんがシャーデーのコンサートで感動し、音楽への夢を育てた場所に、今日坂井さんが帰って来られる。そこに私は居るのだ。


席で黙祷していると拍手が起き、「永遠」がストリングスで奏でられ、"Screen Harmony"が始まった。パンフレットで伊藤さんが「1曲目から盛り上がって、最後まで楽しんでいただければと思います。」と言われているように、最初から乗りの良い曲だった(なお、セットリストはパンフレットに記載されているので、あえてここには書かない。)。
曲が終わると拍手が沸き、多くの人の拍手が後に続いた。曲が終わると拍手、というパターンはごく自然な感じで最後まで続いたが、私はこれが会場に一体感を生み、やがて渋谷夜の部を「映画」から「ライブ」に変えたのではないかと思う。


何曲か聴いているうち、私はあることに気がついた。
"Screen Harmony"には、坂井さんだけの映像(歌う映像と歩いたり話したりする映像がある。便宜的に映像Aと呼ぶことにしよう。)と、坂井さんの映像のかたわらに追悼ライブでの演奏メンバーも入った映像(映像Bと呼ぶ)がある。1曲の中でAとBが交代で出てくるのだが、たいていの場合、Bは間奏部やイントロ、アウトロなど歌のないところで使われているのだ。


そうか、伊藤さんはAを「坂井さんの映像」、Bを「ライブ映像」と呼ばれたのに違いない。バンドとの一体感を出し、ライブの臨場感も伝わる映像と音にしつつ「坂井さんの映像を、ライブ映像で邪魔しない」という伊藤さんの困難な課題は、(他にもあるとは思うが)ひとつにはこういう形で、つまりライブ映像は間奏等で使うことで、見事に解決されているのだ。しかも、これなら"ライブ映像を作る"という観点に流れていっていない。それに思い至った時は、「なるほど、これがプロか」と唸ってしまった。


"Screen Harmony"では何度か涙がこみ上げてきたが、私が一番感動した映像は「あなたに帰りたい」だった。黒いドレスの坂井さんを星のような白い光が取り囲み、その手前を青いサイリウムの光が右に左にゆっくりそろって揺れている。その幻想的な美しさと悲しみが渾然一体となり、深く私の心を打った。


ファンが「Today is another day」の「Hoh!」で右手を挙げるしぐさは既に2004年ライブの時からおなじみだが、今回「Don't you see!」の「あなた」でかなりの人が人差し指を突きだすしぐさをしたのは驚いた。2004年ライブの時には見かけた記憶がないのだが、いつ頃からこれが始まったのだろう?ある意味ではこれは追悼ライブで生まれ育った新たなZARDの「文化」と言えるのかも知れない。


未公開映像で最も新鮮に感じたのは、日本青年館の撮影準備映像だった。黒いスーツの坂井さんが車から降り、階段を上る映像だ。ホール内での映像もあり、私の好きな11thシングル「この愛に泳ぎ疲れても・Boy」のジャケ写撮影場所なので、何だかドキドキしてしまったな(笑)。


また20thシングル「君に逢いたくなったら…」のPVでは(いつものモディリアニとともに)ミロの絵がアップで写った。この映像、初めてのような気がするが、見たことがあるような気もする(笑)。


ライブのような盛り上がりのアンコールが終わった。
2008年代々木のフィナーレで出演者がステージで坂井さんの写真を囲んで記念撮影するシーンや、手をつないで挨拶するシーンは感動的で、大きな拍手が起こった。
そして最後に坂井さんの手書きメッセージが映し出された。


また思いきり騒ごうね  泉水


嵐のような拍手。ファンのテンションが頂点に達した瞬間だった。


「フィルムコンサート」の概念を遥かに超えて涙し、感動し、高揚した2時間。これまで以上に時間が過ぎるのが早く感じたのはなぜだろう。


坂井さん、ありがとう!来年もきっとまた会いにきます。