「ハートに火をつけて」(1)

2010年10月24日の日記で、私は坂井泉水さんが(「ハートに火をつけて」を)作詞され、インタビューが行われたのは、病気(癌)発覚前であったはずだから、それらを病気(癌)と関連させて解釈することは慎みたいという趣旨のことを書いた。その理由を述べておきたい。


注意しなければならないのだが、この曲がご存命中最後のリリース曲であり、リリース前というのは、ちょうど癌が発覚した時期であったから、歌詞やコメントの内容をつい病気(癌)と関連させて解釈してしまいがちであることだ。しかし、それは誤りだと思う。


ポイントは、「ハートに火をつけて」の作詞完成、すなわち歌入れと、PV撮影の順序である。なぜなら、坂井さんが癌に気付かれたのは、「ハートに火をつけて」のPV撮影の日の後の検査の時であり、詞の完成(=歌入れ)がそれより前なら、癌という病気が詞の内容や詞に関する坂井さんのコメントに影響を与えることはありえないからである。


そこで、次の事項の順序を考えてみたい(ページはとくに断らない限り、オフィシャルブック「きっと忘れない」のページ)。
(1)「ハートに火をつけて」の詞が完成し歌入れされた日
(2)「ハートに火をつけて」のPV撮影。同日深夜、体調急変。その後の検査で子宮頚癌見つかる。2006年4月、p229
(3)「グロリアス・マインド」録音。2006年4月、p249


(1)の「ハートに火をつけて」の録音はどんなご様子だったのだろうか。坂井さんはこう語っておられる。
「歌入れ当日に雨が降っていて・・・"この雨の音をサンプリングしたい!"と思いつきました。急きょ、マイクを自分の思う音が拾える高さにセッティングして、サンプリングし、打ち込みました。」「WHAT's IN?」2006年5月号


ここには曲のためなら何でも積極的に試し、創作意欲に溢れたこれまで通りの坂井さんが居られる。実際は体調が良くなかったのかも知れないが、この記述からは癌はもちろん体調不良の影響を感じることはできない。


そして、(2)の時点までは、体調不良もあったとは思うが、ロケもこなせる状態であったのだ。


これと対照的なのが(3)の「グロリアス・マインド」の録音である。その時のご様子について島田さんは次のように述べておられる。
「その時も体調が悪くて、初めてお母さんに付き添われてレコーディングに来たんです。どうしても歌いたいという気持ちが、坂井さんの中にあったんだと思うんですよ。ただ、あまりにも体力がなかったので、歌った回数は2回ぐらいでした。でも、その歌っている時の鬼気迫るっていうか、歌っておかなければいけないってギリギリの感じは、鳥肌がたちましたね…。」p248

(つづく)