悲しみと感謝と:ZARD”What a beautiful memory〜forever you〜”(10

ここで大野愛果さんが呼ばれました。大野さんのスピーチ内容は(他のゲストも同様ですが)music freak Es vol.19(7月号)のLIVE REPORTに詳しく記載されていますが、強く私の印象に残っているのは、大野さんが坂井泉水さんと初めて会われた時、「曲を、よろしくお願いしす。」という坂井さんの声がとても優しかったですと言われたところでした。おそらくまだ駆け出しの大野さんにすれば、雲の上の存在だったであろう坂井さんと会うだけでも大変なことなのに、優しい声で「お願いします」と言われたのですから、さぞ感激されたであろうことは容易に想像できます。


そして、大野さん作曲の第25曲目「かけがえのないもの」。私はこの名曲を2004年武道館ライブで初めて聴いた時の感動を思い出していました。
その時のことを私はこんな風に書いています。
武道館では「止まっていた時計が今動き出した」を歌い終わった後、「ちょっとだけなんですけど、新曲を・・・」とMCが入った。その瞬間、武道館は「うおーっ!」というどよめきで満たされ、頂点に達した興奮の中で静かに「かけがえのないもの」が始まった。鳥肌が立つような感動だった。そしてラスト部分のすごい迫力!泉水さん、すごいよ!何てすごいんだろう!こんなにもファンでいることの幸せと、誇らしさを感じたことはなかった。泉水さん、ありがとう! http://f24.aaa.livedoor.jp/~rzard/LRZ/Live/Livememory.htm


この曲について、坂井さんは、
「コンサートのサポートメンバーである両氏ギタリスト参加のアレンジですので、ライブの様な厚みのあるサウンド、オケの楽曲です。ストレートなサウンド、メロディー、特にサビは90年代のZARDの楽曲を彷彿とさせますね。」と語っておられます。WEZARD vol.30


寺尾広さんによれば、2004年ライブツアーの合間に大変短い期間に完成されたそうで、「ツアー・メンバーだったギターの大賀好修さん、ギターの綿貫正顕さん、ベースの麻井寛史さんに、それぞれダビングしてもらい、熱気溢れた仕上がりになりました。坂井さんもツアー中の為か、まるで第三の目が開いているかのごとくハイペースで歌詞を書き上げ、歌入れをして、すぐにMIXをして完成させた様に思います。」と。『Soffio di vento 〜 Best of IZUMI SAKAI Selection〜』LINER NOTES by Hiroshi Terao http://wezard.net/liner.html 


坂井さんがライブの熱気と高揚感に動かされて、ライブのサポメンと一気に作られた様子が良く伝わってきます。


聴きながら私はこの曲の持つ熱い思いと同時に、痛切に「かけがえのないもの」を失った哀しさを感じていました。


26曲目は「きっと忘れない」でした。いきなりハイトーンのアカペラのサビから入るところは、いつ聴いてもハッとさせられてしまいます。「かけがえのないもの」から「きっと忘れない」。否応なしに坂井泉水さんのことを思い起こさせるこの流れは堪りませんでした。


「きっと忘れない」の次の27曲目は「もう少し あと少し」。切ないZARDの楽曲が続きます。今はそうでもないのですが、私はファンになってからかなり後まで「明るく爽やか系」や「励まし応援系」の楽曲より、こうした「切ない系」の曲に惹かれていました。坂井さんの屈折した感情表現は本当に素晴らしいと思います。


(続く)