著作権侵害?

私のサイトのように、ZARDあるいは坂井泉水さんの画像を使用するファン・サイトでは、ファンから著作権(あるいは肖像権)侵害ではないか、という非難を受けることがある。*1

私に言わせれば余計なお世話で、ナンセンス極まる非難なのだが、サイトオーナーによっては、そうした非難に耐えられないデリケートな人もいるだろう。個別にいちいち反論するのも面倒なので、いずれ私の考えをまとめておきたいと考えている。*2

しかし、私の考えをアップできるのはいつになるかわからないので(汗)、とりあえず知的財産権専門家、寺本振透弁護士の見解を紹介しておく。
http://www.imasy.or.jp/~ume/copyright-ml/inetmag/internet-magazine-1997-04.html#Ref1

寺本弁護士は著作権についてだけ述べておられるが、パブリシティ権についてもほぼ同様であると思う。以下、「 」内は寺本弁護士の記述の引用である。

寺本弁護士は、WEB上で繰り返される著作権侵害非難発言について、「知的財産権諸法によっては正当化され得ないようなあやしげな発言が横行したり、知的財産権諸法の目的に反する横暴がなされ」ていると嘆く。

著作権者は、排他的権利(他人に複製させない権利)を行使するか否かを自分自身の判断て決める権利を持つ。自分が排他的権利を行使したくないと考えているのに、第三者が勝手に排他的権利を行使することを、著作権法は認めていない。」。「著作権者の立場からすると、自分の著作物を他人が複製または有線送信することを認めるかどうかは自分自身の専権であるのに、自分の代理人でもない第三者が勝手にそれらを禁止したり犯罪行為よばわりすることは、はなはだ迷惑なことである。」。

まったくその通りである。決めるのはあくまで著作権者であって、サイトオーナーが第三者から著作権侵害だと非難されるいわれはない。

さらに、非難した者は著作権者に対して法律上の損害賠償責任を負うかも知れないという。

「告訴するつもりもない行為を犯罪よばわりする第三者の出現によって、あたかも、著作権者自身がケッの穴の狭いヤツだと思われることは心外である。無関係な第三者の不用意な発言によって著作権者自身か損害(とりわけけちだと思われることによる名誉毀損、このようなけちな企業の商品を買うのをやめようと消費者が考えることによる商機の逸失)の賠償を、民法上の不法行為に基づき、お節介な他人に対して請求することは、十分に正当化されよう。」。

アーティスト・サイドにして見れば、ファンによる無料の宣伝になっているのに、余計な邪魔をしてくれるな、ということかもしれないのだ。

では、なぜアーティスト・サイドは公式に画像使用を許諾しないのか。寺本弁護士の見解は明快である。

著作権者は、その商品やWWWサイトにおける表示において、"本著作物の無断複製いっさいを禁止する"むね記述することが多い。」。しかし、「そのような場合であっても、著作権者が本当にあらゆる無断複製に対して排他的権利を行使し、差止および損害賠償を請求しようと考えている場合は少ない。では、なぜ、そのような、"現実に権利行使するであろう範囲"より広い範囲を示す警告メッセージを記述するのだろうか?」
「第一に、事前にあらゆる場合を想定して "権利行使する予定の範囲"と"権利行使しない予定の範囲"とを区別して明確に記述することは困難である。」
「第二に、一見同じような複製行為であっても、"競合他社がやるのであれは排他的権利を行使したい"が、"潜在的顧客となり得る消費者がやるのであれば排他的権利を行使しない"ことにするのは普通である。だが、競合他社が潜在的顧客であるかのような外観をもって複製行為をしないとは限らない。」
「第三に、"権利行使をしないつもりである" 範囲をあまり広く記述すると、害意ある他人がそれを悪用したあげく、"おまえは、権利を行使しないと表示したではないか"と開き直る危険がある。だから、権利者とすれば、実際の意思よりもやや厳しい警告メッセージを表示したうえで、複製等を行った者の立場と行為の態様、それに自分に対する迷惑の大小と権利行使のコストを勘案したうえで、個別に権利行使するかどうかを任意に決定したいと考えるのは、当然のことである。それゆえ、著作権者が上記のような表示をしているからといって、著作権者の代理人でもない赤の他人が勝手に、著作物のコピイについて攻撃することも正当化され得ない。」

この第三番目の指摘は非常に重要だ。アーティスト・サイドとしては、意図された範囲内で自由に使っても良いと思っても、そう書けない事情があるのだ。また、「画像を無断で複製するな」と明示していても、それをもって第三者がサイトーオーナーによる著作物のコピーを攻撃して良いということにはならないのである。

最後に寺本弁護士は、そうしたいわれなき非難を行う者に対して警告する。

「へたに他人に対して"著作権侵害である"とか"犯罪行為である"とかいって非難したあげく、それが不相当であった場合にはもちろん、相当であったとしてもことさら公にののしる必要がないのにそうした場合にば、名誉段損(私法上は民法における不法行為。刑法上は名誉毀損罪)を構成する法的リスクをみずから侵すものであることを知っておくほうがよいだろう。」と。

要するに、アーティスト・サイドが当該サイトにおける画像使用が困ると考えれば、警告を発するだろう。それができるのは権利者(アーティスト・サイド)だけなのである。サイトオーナーはアーティスト・サイドから言われるまでは常識の範囲で画像を使っていて良いのだ。それを第三者が「著作権侵害だ」などと非難するのは筋違いなのである。

*1:私のサイトでそういう非難を浴びせられたというわけではない。

*2:だいたい、アーティストの公開された画像に「パブリシティ権」ではなく「肖像権」を持ち出すこと自体、その人がいかに不勉強な人物であるかを示している。無視しておけば良いのだが、放置すれば掲示板が荒れる。一応ファンであることが多いし、本人は「正義の味方」のつもりで居る。困ったものである。