ある詩人のこと
まず、次の詩を読んで欲しい。
追いかけて
愛した人を
苦しめるより
忘れる勇気を
持つことが 大切よ後になると
それがよくわかるのあなたのこと
心配してくれている
人がいる
あなた気づかないだけ
これは坂井泉水さんの詩ではない。しかし、「ひとりが好き」を連想するZARDファンは多いのではなかろうか。
愛して やさしさを失うよりは
みつめていたい
近くて 遠すぎる
あなたの影を 抱いて
「ひとりが好き」より
実はこの詩は「あなたに(2)」というタイトルの柴田トヨさんという方の詩である。柴田さんは90歳を過ぎてから詩を書き始め、来年は100歳になられる方で、今年、初めての詩集「くじけないで」を出版された。
柴田トヨさんのことは少し前oy-miyuさんからこの日記のコメントでご紹介いただいて読んだのだが、この詩からも伺えるように、まるで坂井さんのような瑞々しい感性には驚嘆させられる。90歳を過ぎると、世の中に無関心になるのが普通だから。
詩を90歳過ぎてから書き始められたという前向きの生き方にも驚く。「始めることさえ忘れなければ、人はいつまでも若くある。」というマルティン・ブーバーの名言を久しぶりに思い出した。
あとがきで柴田さんは「人生、いつだってこれから。誰にも朝はかならずやってくる。」と仰っている。私は坂井さんの「人生はいつだってオーディション」(「この涙 星になれ」)、「生きてる限り朝は来る」(ニューバージョンの「愛は暗闇の中で」)を思い出したが、それはともかく、こうした柴田さんの揺るぎない信念に心を打たれる。
至る所に人々への感謝が溢れ、読んでいて心が暖かくなってくる、素晴らしい詩集である。
ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B4%E7%94%B0%E3%83%88%E3%83%A8
やなせたかしさんの書評http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100328/acd1003280917003-n1.htm