ジョン・レノン「Mind Games」を翻訳してみました

まず、最後のZARD展のお知らせです。
9月21日(水)から9月26日(月)まで福岡「大丸福岡天神店」で"ZARD 20th YEAR展〜History of IZUMI SAKAI〜"が開催されます。とても悲しいですが、展覧会は今回が最後。これを逃すともう二度と機会はないかもしれません。まだの方は、是非。
http://wezard.net/20th/zardten.html
http://tenjin.keizai.biz/headline/3177/



ジョン・レノンMind Games」を翻訳してみましたのでご紹介します。これは映画「ジョン・レノン,ニューヨーク」の記事の番外編(笑)ですが、もちろん、ZARDの「MIND GAMES」解釈のヒントになるかもしれないという思いがあります。


ZARD楽曲中最も難解ではないかと私が考えているのが「MIND GAMES」。私は未だ腑に落ちる解釈に辿りつけません。このZARD曲には、既に書いたとおり、タイトル以外にもジョン・レノンの「Mind Games」の影響が見られ、類似のフレーズが使われています。
Projecting our images in space and time (John Lennon)
時間と空間の中 未来のイメージ ずっと焼きつけて (ZARD)


もちろん、坂井泉水さんがジョン・レノンの曲をどう捉えておられたのかはわかりませんが、この曲にインスパイアされたことは確かだと思われます。そこで、まずジョンの曲の意味を掴んでおきたいと思い、ネットにある「Mind Games」の翻訳を幾つか見てみたのですが、納得できる解釈は見当たりませんでした。なかなか楽には行きませんね(笑)。で、それなら自分で、と思って勝手に(笑)翻訳してみたというわけです。


なお、ジョン・レノンの「Mind Games」はそのまま日本語にしても何のことかわからない部分が幾つかあるので、そこについては思い切って意訳したことを予めお断りしておきます。

We're playing those mind games together,
僕たちは「心の革命」というやつをやっている。
Pushing barriers, planting seeds,
壁を押しやり、種を植えて、
Playing the mind guerilla,
心の闘いをやっているんだ。
Chanting the Mantra peace on earth,
聖なる言葉を唱え、平和を願い、
We all been playing mind games forever,
永遠に「心の革命」をやり続けているんだ。
Some kinda druid dudes lifting the veil.
異教の僧がベールを剥いで、
Doing the mind guerilla,
心の闘いをやっている。
Some call it the search for the grail,
聖杯探しのように無駄だと言う人もいるけど、
Love is the answer and you know that for sure,
君は知っているよね、愛こそが答えなんだ、
Love is flower you got to let it, you got to let it grow,
愛は君が育てなくちゃならない花なんだと。
So keep on playing those mind games together,
だから一緒に「心の革命」をやり続けよう、
Faith in the future outta the now,
今から生まれる未来を信じて、
You just can't beat on those mind guerillas,
心の戦士たちを攻撃するなんてできやしない、
Absolute elsewhere in the stones of your mind,
既製概念とは別の次元の所に居るのだから、
Yeah we're playing those mind games forever,
そうさ、僕たちは永遠に「心の革命」をやり続ける、
Projecting our images in space and in time,
時間と空間の中に僕たちのイメージを映し出して、
Yes is the answer and you know that for sure,
君は知っているよね、「Yes」こそが答えなんだ、
Yes is the surrender you got to let it, you got to let it go,
「Yes」に身を委ね、その命じるままにしなくちゃならない、
So keep on playing those mind games together,
だから、一緒に「心の革命」をやり続けよう、
Doing the ritual dance in the sun,
太陽の下で祝祭のダンスを踊りながら
Millions of mind guerrillas,
何百万もの心の戦士たちは
Putting their soul power to the karmic wheel,
魂の力で因果の輪を廻すために、
Keep on playing those mind games forever,
永遠に「心の革命」をやり続けている、
Raising the spirit of peace and love, not war,
戦いではなく平和と愛の精神を掲げて。
(I want you to make love, not war, I know you've heard it before)
(戦いではなく愛しあって欲しい、前にも言ったよね)


少し補足説明させてください。
1."mind games", "mind guerrilla":ほとんどのネット翻訳ではそのまま「マインド・ゲーム(ズ)」「マインド・ゲリラ」としていますが、これでは何のことかわかりません。"mind games"を辞書でひくと「心理戦」とあるのですが、この場合は使えないでしょう。また、"mind games"の"games"はゲーム(遊び)ではありません。最後に「戦いではなく愛しあって欲しい」とある反戦歌なのですから。
これらの言葉を曖昧のままにしておけば歌の意味が明確になりません。そこで、ジョンは何を伝えたかったのかから考えてみました。

ジョンは「Imagine」に表れているように、世界を変えていくにはまず心を変えることだという考え方をしています。定番クリスマス・ソング「Happy Xmas (War is over)」には子供たちの印象的なバックコーラスで "War is over, if you want it"(戦争は終わる。あなたが望めば。)が繰り返されます。http://www.youtube.com/watch?v=hb2YSAVHmIE


こうしたことから、"mind games"は、心を変える、世界(もの)の見方を変える、あるいは意識変革という意味だというのが私の考えです。
「Imagine」で「想像してごらん」と呼びかけたジョンが、挫折(ベトナム戦争の北爆強化を主張するニクソン大統領の再選)を経験し、単なる「想像せよ」よりも強く「意識を変えよう」と呼びかけた歌が「Mind Games」なのだと思います。
"mind games"の訳は意味的には「意識変革」でも良いのかもしれませんが、"mind guerrilla"という戦闘的な(あくまで心のレベルですが)言葉が使われていることから、あえて「革命」というインパクトのある言葉を当て、"mind games"を「心の革命」、"mind guerrilla"を「心の闘い」とした次第です。


2."Yes is the answer"
mind games」の翻訳中、この「YES」という言葉の背景にあるエピソードを知ることができました。
それは既に前衛芸術家として有名だったヨーコさんの個展でジョンが初めてヨーコさんに出会った時のことでした。その内容は次のページの中頃にある「YES オノ・ヨーコ」展をご覧ください。http://www.arttowermito.or.jp/art/yokoonoj.html


この「Yes」の意味は様々に解釈されていますが、http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q108119430 ヨーコさんはニーチェに傾倒していた(「永遠のジョン・レノン」p93、巻口勇次、三修社、2008.11.25)そうなので、私はニーチェ思想の核心にある「自己の生を受け入れ、肯定せよ」に近いメッセージだと思っています(そう言えば、坂井泉水さんもニーチェを読んでおられましたね。)。上記の「YES オノ・ヨーコ」展解説でも「本展のタイトル「YES」に込められているのは、肯定的にものごとをとらえてゆくオノ・ヨーコの作品や活動を象徴するものです。」と捉えられています。


ジョンがどう理解していたのかはわかりませんが、「YES」という一言には、こんな深い意味があったことがわかって、ちょっと嬉しかったです(笑)。


上記ジョン・レノンの「Mind Games」の翻訳には異論があるかもしれませんが、歌の大意はこんなところだと思います。
ただ、ZARDの「MIND GAMES」の解釈にはあまり役に立たないかも・・・(汗)。