坂井泉水さんは何のために「詞」を書かれたのか

久しぶりにこの「日記」の本来の?堅くて理屈っぽい(笑)記事を書いてみたいと思います。

12月15日(土)だったと思いますが、たまたまテレビを見ていると、「佐野元春のザ ソングライターズ」という番組で佐野元春さんが自分の作詞観を語っているところでした。その中で、自分は何故作詞するのかについて、とても興味深いことを語っていて、私にとってはもしかすると坂井泉水さんもこんな思いで「詞」を書いておられたのではないかと思わせる内容でしたのでご紹介します。


佐野さんによればソングライティングとは
1.自分を知る作業である。
2.共感を求めるための作業である。
3.普遍性を獲得する作業である。
4.世界を友とするための作業である。
と言うのです。

「自分を知る作業」について佐野さんはこう言っています。
自分を知る作業は自分にとってよいセラピーになる。感情が乱れた時、言葉を吐き出すことによって、自分が何を感じ、何を考えているか見出せる。


そうか、なるほど。私は作詞とはまず「自分を知る」ことなんだという点、坂井さんがWEZARDのファンの質問に対して、「詞」の中でこんなに自分のことを書いているのに、という趣旨のことを仰っておられたことが思い出され(出典を調べたのですがわかりませんでした。判明したら追記します。)、坂井さんはまず自分のことを書くという行為を通じて自分の存在を確認された。つまり「詞」を書くことは「自分を知る」ことだったのではないか、と。


「共感を求めるための作業」について佐野さんは、
自分の経験を引き金にして、想像力を広げていく。個人から立ち上がって、時には他の人を激しく感動させることがある。自分が書いた歌が、誰かを感動させたということではなく、誰かが歌に共感したからこそ、言葉に力が宿ったと考えるべきではないか。
と言っています。

確かに武道館の生ライブで坂井さんが「もっと近くで君の横顔見ていたい」を歌われた時に感じた「言霊」は「誰かが歌に共感したからこそ、言葉に力が宿った」と捉えられるかもしれません。
2010-07-23 武道館ライブ http://d.hatena.ne.jp/moon2/20100723
2008-05-30 代々木ライブ その3 http://d.hatena.ne.jp/moon2/20080530


「普遍性を獲得する作業」について佐野さんは、
優れたソングライターは、スケッチの力が強い。スケッチの力とは、ソングライター自身の心の目を通じた、オリジナルの捉え方のこと。当たり前の視点ではなく、独自の視点でスケッチをする。何か気の利いたことを技術的に言おうとするのでなく、目の前の対象物を自分の心の目で、できるだけ正確に写し取る。それが作品としての普遍性を獲得することにつながる。
と言っています。
「独自の視点」つまり「自分の心の目で、できるだけ正確に写し取る」スケッチの力があってこそ、普遍性を獲得できるのだと。


坂井さんの「詞」に「はっ!」とした経験のある方は多いと思います。そこに感じる独自の視点こそ、歌が普遍性を持つのに必須の要素なのでしょう。坂井さんが推敲に推敲を重ねられたのも歌に普遍性を持たせたいという坂井さんの思いだったのではないでしょうか。(確か坂井さんはご自分の歌が「永遠のスタンダード」になれば良いな」と言っておられますが、これまた出典を調べたのですがわかりませんでした。判明したら追記します。)。
および 2010-10-24 「ハートに火をつけて」WEZARDコメント http://d.hatena.ne.jp/moon2/20101024


「世界を友とするための作業」について佐野さんは、
世界と対立するために歌を書くのではなく、世界と和解するために歌を書く。詩を書くことは、自分が自分であることを確認する作業。詩を実現するには、相当の忍耐がいる。ソングライターは忍耐を覚悟しておかないといけない。それを詩的に表現すると、ソングライティングは、世界を友とするための作業となる。
と言っています。

「詩を書くことは、自分が自分であることを確認する作業」であり、「世界と和解するため」なんだと。
作詞者の独自の世界観を一般の世界に合わせなければ、一人よがりになってしまい作品になりません。どうしたら思いを伝えられるかという坂井さんのギリギリまでの歌詞の推敲は有名ですが、これは佐野さんの言う「世界を友とするための作業」ということなのではないでしょうか。


初めて見た「佐野元春のザ ソングライターズ」でしたが、以来私にとって定番になりました。番組は佐野さんとゲストの作詞家との対話、佐野さんと作詞に関心を持った観客との質疑応答、佐野さんの作詞に関するモノローグから成り立っています。
テレ土曜日の零時半から30分です。


なお、私事ですが、依然体調には波があり、手指の具合も良くありません(この記事も少しづつ書きとめたものです。)。来年こそは身体が元に戻るよう頑張っています。


それでは皆さん、良いお年をお迎えください!


moon